2話 イベントはつづくよどこまでもー  中編





「やだー久し振りのこの歓声!!」

「あぁーやだやだやだやだこれだからここに来たくないんだよっ!」

食堂に入った瞬間にキャーー!!だのわぁーー!!とか、かっこいい!!が聞こえてくるここまでは良い、
しかし聞きたくないのに耳に入るこれらの言葉、抱いてーとか抱きてーとか痛いよね。

男にキャーとかワァーなら分かる、ほらアイドルとかいるし、
実際伊織は生徒会員だからそういうアイドル要素はありますでしょう?
抱いてとか抱きたいってここは男子高ですよ奥さんみたいな!!

「もう後ろからくればいいじゃん、テラスの方からさぁ!!」

「ムリムリばれちゃうしさぁ結局」

ハイ?なに涼しい顔して周りに手を振ってんだよ、

アレか!自分の顔はいいし、オーラは隠せないよってかこの野郎。

はぁー腹立ついつか生徒会の補佐受けのBL小説プレゼントしちゃる!!

そして苦しめばいいんだよ、自分が受けになる恐怖を味わえばいいよマジで!

あっでもそういうのって普通の本屋に売ってるんだろうか?

よしんば売ってたとしても、その中に男である俺がBL小説を買うの?

レジに行って定員さんに『げっ!この人ホモ!!』な目で見られるの?

えっなに伊織を苦しめるためなのに、逆に自分の首絞めてない?



「しのしの!!ビップ席!ビップ席」

こらそこ人の事を勝手にそっちに連れてくんじゃありませんよ。

「やだよ、オレ生徒会じゃねーし」

それにあっちにいったら余計に視線がうざいじゃんよー。

「だって〜しのしのこの中で一人でご飯食べるのーしんどいよー。」

「・・・・・帰ります」

途中でパンとか買えばいいかなー。

「やだやだオレ1人じゃきついじゃん!あんな連中とご飯なんか食べたくないよ〜」

「だだこねんなー」

「いいじゃ・・・」



きゃぁーーーーーーーーーーーーー!!!!!



「うぁい!生徒会‘sだ!!」

食べたくないと騒いでいたはずが登場するやいなや歓声を上げている。

「いやーほぼ毎日見てるだろー」

「いやだなぁーこのイベントは別だよ別!!」

と言いながら瞳はキラキラしてました。

そのキラキラを目の当たりにしたチワワ達はキャーキャーいっている。

おいおいチワワ達この欲望に塗れたキラキラもといギラギラでなぜ騒ぐ。

俺は身の危険しか感じねーよ!!



「んっ・・・・補佐・・い・・る」

「どぉ〜したの〜彬?」

「同じ・・俺ら・・・生徒会・・・?」

「あっ本当だ〜さぼり君じゃん!!」



「どうしようしのしの、オレあのコンビすごくツボだよ!」

だってさぁ無口系ワンコの関彬(せきあきら)に残酷系小悪魔ちゃんの東雲聖司(しののめせいじ)だよ。

本当にこの学園にしてよかったよ〜一年間吟味したかいあったよ。

「・・・・・・・むだな1年だな。」

つーかあいつらの視線上に入っていませんか?

どうするオレ。

「なに〜君たちもあの席で食べるの?」

「んーんいつもチワワ達と食べるんだけどたまには永浦も寂しいかなーって」

とオレによりかかりながらさきほどとはまた違う緩い喋り方をする。

「でもそれは無理だよ〜違うとこで食べてよ〜つーか向こういけよ?」

むしろてめーらの席なんぞ初めからねーよと小声の一言

可愛らしく首を傾けてニパパーな顔で実にストレート。

一瞬なにを言われたのか勘違いかと思うほどの可愛らしさの猛毒。

「・・・むり・・今日・・特別・」

「っそれはイベン」

「わぁーーーーすげーーなにこの広さ。」



「さくちゃん〜〜!!」

「聖司!ここにいたのか」

「・・・咲也・・・おれ・・いる」

「彬もいるのは知ってるよ。」

「・・・伊織、逃げるぞ。」

「えぇーなんで!」

「うっさい馬鹿、面倒なことに巻き込まれたくないんだよ。」

「ムリムリもうここにいるし。」



「ほらほらご飯はこっちで食べよー。」

手を振るだけではダメなのかぴょんぴょんと兎のように跳ねている。

そういうところが伊織のいう小動物系らしい。

オレからしたら落ち着けといいたくなるが。

「あっおまえあの時の!!」

「じゃ」

「もうしょうがないな」

「おいなんだこの手。」

「んっ確保。」

「なぁなぁ!!」

「帰るんだ俺は。」

あの平和なあの世界に!!

「なぁお前なんて名前なんだ!!」

伊織を振りほどけないばかりに!

「・・伊織!!」

縋るように隣に声をかけるとなぜか一般生徒の群れの中にいた。

そして笑顔のまま口パクでこちらに話しかけてきた。

(がんば☆)

「名前は?な・ま・え、教えろよー」

「うっせー放せ!!」

どんだけバカ力なの、引っ張っても全然びくともしないんですけど。

右腕に両腕でしっかり握りしめて、しつこく名前は?と聞いてくる。

これは教えるまで離しませんよということなのか?

それならば

「永浦」

これで腕を離してもらえるなら安いものだろう。

「ながうら 何?」

なにフルネームを御所望ですか。

どうすればいいのさと視線をそいつからずらすと、視線の先に伊織がいてまた口パクで

(萌える)

そんなことよりも助けろや痛いんだよ腕が!!

これがおわったらあの薄い大量にある本を燃えるゴミの日に出してやるわー!

しかしなんだよこいつ背が小さいくせに腕の力はんぱねー。

ある程度腕に力を入れているから、みっともなく痛い!!って叫ばないがギリギリッときしみ始めている。

「ってめーいい加減に」

しやがれっと



「咲也」

ざわめくレストラン中に響く声に辺りは急激に静まり返った。

モーゼの十戒を思い出した。