「上村千尋、好きだ!付き合え!!」
「えつ無理?」
昼休み皆の憩いの場中庭。
公衆の面前でいきなり告白されました。
がちがちにこわばった顔でいきなりフルネームで呼ばれかつ告白、最初は「隙だ、突き合え」なんてべたに聞こえたくらいだ。
幸いスゥィーツ仲間が「なに惚けてるの!?告白だよ!!」と正気づけてくれたからよかったけれどもう少しで持っていたカバンで殴ってしまうとこだった。
「付き合っている人がいるのか?」
「いや、いないけど」
「じゃぁ好きな人でもっ!」
「いやだからいないって」
つーかなんだよ、ちけーよ。
言葉を返せば返す程どんどん近付く告白男。
「なら、試しでもいいから俺と!!」
しょーじきもうドン引きしていた俺の両手を握って熱く語りかけてくる。
(あぁー殴ってもいいかな?)
かわいい子との接触ならむしろこちらからお願いしますと、ダイビング土下座をかますくらい餓えてはいるけれど、男のしかも可愛くもない野郎に触られても嬉しくない、しかも相手はこちらに好意があるなんてはっきりいって気持ち悪い
だってあきらかに下心ありまくりそうだし。
短髪にそろえてある髪に健康的に焼けた肌でなかなかの顔でさわやか系。
しかし残念なことに鼻息は荒く、なにを考えているのか目の奥はギラギラと血走って、握られた手は汗でしっとり、いやじっとりして振りほどきたい。
なぜか、傍にいた甘甘仲間達は期待に満ちた目でこちらを見つめ、周りの野次馬はやんややんやとはやしたて、はっきりいってマジで切れちゃう☆五秒前!のカウントダウンがはじまりそう。
「うぜぇー」
小さい声で吐き捨てる。
「えっなに?、俺こうみえてもバスケ部のレギューラーだから、それに気にしなくていいよ」
「人の話を聞けよ・・・」
「俺のファンたちには俺からしっかり話しとくから、心配いらないよ」
「付き合う気はねぇーし・・・・・・・」
「大丈夫守るから!」
どうしよ話を気かね―なおいっ!!
暴走する告白男にそのつど訂正、もとい拒否をしてもあきらめない。
「それに千尋の可愛さにみんな納得してくれると思うし」
「はっ?なに呼ぶ捨てっ・・・・・」
「こんなに可愛いのが俺のものになるのかぁ〜幸せだな」
「ここは逃げるか・・・」
もはや会話のキャッチボールが期待できないのを相手にするのもつかれる。
しばらく逃げていればあきるだろう。
「あっこれから俺の部屋来る?俺的にはもうがぉーって感じだけど我慢するし・・・・」
「さとう〜くん〜、なにちぃをこまらせてるのかな〜つーか黙ろうか?」
せっかく巻いたはずの鳥がなぜここにいてしかもいいタイミングで現れる。
お前のいつものKYはどこにいった。
「鳥、佐藤(仮)の首締めすぎ、顔が青くなってるぞ」
「あっ!本当だ、ついつい、なんかむしょうに腹立つこと言ってたから無意識に首絞めちゃった。」
でもほらあれだよ、正当防衛ってやつだよね。あははと声は笑っているのに顔は笑えない殺気まみれになっている鳥にさりげなく視線をそらした。
鳥なのにその姿は闘鶏のようだ、鳥とあなどるなかれやつらはやる時はやるようだ。
「そうか、先輩さりげなくマジックで童貞・ED・包茎手術待ちって下ネタオンリー!しかもそれ油性じゃないですか、さすが先輩容赦ない。」
仰向けで倒れた佐藤(仮)の横にいつのまにか先輩まで来ていてさらにトドメとばかりに顔に書いていた。
せっかくのさわやか系の顔が無残にも下ネタで埋められていく。
「でしょ、地味にこっちのがきついでしょ、それに明日試合らしいから、ふふふっ消えないよ」
まったく横からしゃしゃり出てきて、厚かましいったらないよね
ねぇーと暗い笑顔で鳥に同意を求めていた。
はぁーそこまで俺をはさんでラブコメをしたいのか。
「ヒイロっ!」
「っうわっ!メイ?」
後ろから包み込むようにして抱きつかれた。
瞬間に誰だが分かる俺はすごいと思う。
「会いたかった!ヒイロはさみしかった?」
「たったこのまえ1ヵ月前あったばかりだろ?」
この間も里帰りを利用して、むこうに会い行ったのになんで日本に、しかもこんな田舎にいるんだ?
「薄情だ、けど好き!」
「あーはいはい」
拗ねたのかそのままギューと力を込めてくる。
う〜ん、少し苦しいや。
「「っまた」」
「そこから動くなよ」
「おい、2人に牙剥くなよ」
「ムリ、はぁー本物のヒイロだ」
肩に顔を埋めて甘えるようにスリスリとじゃれてくる。
しかたないなーと見た目ほど柔らかくない髪を撫でてみる。
たった一か月の間またずいぶんとまぁ大きく育って、なんておばあちゃんが孫にいいそうな言葉が浮かんだ。
向こうの食べ物はそんなに身体を大きくする成分でも入っているのだろうか?
「上村君だれその人!?」
甘甘仲間の一人、イケメンは世界の守るべき宝がもっとうがかなり食い付き気味で聞いてくる。
さすがイケメンはみんなの視線を独り占めするために生まれてきたのかと思う。
「・・・あー、俺の旦那です。」
嘘つけと人をうそつき扱いしないでほしい、確かにイケメン様が俺と結婚!?と思うだろうがかれこれ小学生からの付き合いでプロポーズも向こうで中学までもうアタックされてたんだ俺がね。
そんなこんなで女子でもなく可愛くもない普通みたいな俺をかわらず好きとかいわれたらいくらなんでも落ちるだろ。
諦めさせるためにオタクを装ったのにそれでも変わらないってのはすごかった。
親や友達、兄弟にも冷たい態度を取られていたのにひさしぶりに実家であったら(中学は全寮制に別々に通ってたので)相変わらず好きだってさぁ?不覚にも涙出たよ。前の面影なんてないのにさ。
「結婚はもうすんでますがなにか?」
普段ものぐさな俺がなくさないようにとネックレス風にして首から下げていた指輪を取り出してほら証拠と野次馬たちに見せていた。
「メイ、勝手に見せびらかすな」
「ごめん、でもヒイロは俺のだから、牽制しとかないと。」
「それはいい、むしろ気にしなかったら離婚だ離婚。」
そんな薄情なやつはこちらから願い下げだ。
オレはべたべたに甘やかしたり甘えるのが好きなんだ。
愛されているという実感がわいてくるからそれに怠慢は不仲につながる、つねに相手のためにどうしたら?取られたくないという気持ちを持ち続けることがじつは一番大切だと俺は思っている。
だから牽制やヤキモチは一種の愛情の欠片見せられて嫌になるわけがないむしろ嬉しくもある。
「いいの?」
「つーか、せっかく帰ってきたのに俺作の指輪は見せびらかすし、なにか忘れてねー」
拗ねるようにして肩にぐりぐりと頭を押し付ける。
「・・・っただいまのキス!!」
「せーかいっ・・・・ふぁ・・んぐっ・・」
(こいつうまくなってるっ!)
2年ぶりのキスは可愛らしいものではなかった。
バードキスで待ち構えていた俺の口腔をほのかに甘い味のする肉厚の舌で念入りになぶられるのがなんともいえずに振りほどこうとした手が縋るようにメイの服を掴んだ。
「ん・・・あっ・・」
久方ぶりの吐息さえ奪うほどの激しさに最初は負けじとこちらも積極的に舌を絡めたりしたが、その行為自体もしなさすぎてあいまいになってしまったのかうまく息継ぎができない。
さすがに苦しくなって抗議のつもりで胸元を強めに叩いた。
せつなそうにこちらを見つめてからさんざん口内を愛撫していた不埒な舌を引き抜いて顔を離したが名残惜しそうに唇をひと舐めして離れた。
「かわいい」
「・・・っは・・メガネ作った方がいいよ」
こんな平凡顔がかわいいなんてやっぱり俺の旦那は変わっている。
嫌身に聞こえるその言葉もメイがいえば本当のことだと分かるからなおタチが悪い。
「というわけで」
なにがというわけなのか分からないが体に力が入らないことをいいことにだっこされた。
「はっ・・つーかなんでお姫様だっこ!?」
鳥てめぇ〜お姫様だっこっていうなよー、この年でもされるってきついぞ、視覚的に。
メイを咎めるようにじっと見上げると
「空港でこんな格好をした広告があった、俺は夫だし、やっぱり一度はしてもらいたいはずだって、しらないおばちゃんが言ってた。」
あれかぁー≪CMで絶賛放送中の結婚式は空港そばのカナル○ウスで!≫という声とともになぜかタキシード姿の新郎とウエディング姿の新婦がうふふあははな、あれかぁ
たしかにナニュラルにお姫様だっこしていたな。
「それに膝ガクガクでしょ?」
とにこやかに知られたくないことを指摘してきた。
「うっ!それは・・・・・・・・うっさい馬鹿」
「はいはい、俺はばかですよ〜じゃぁ行こうか〜」
そういって一応平均的な俺を恥ずかしいお姫様だっこをしながら優雅に歩みを進めた。
「ちょっとどこに行くの部外者が!千紘君離してよ」
「・・・来週ここに編入するから部外者じゃない」
「それにしても、ちぃは置いていけ」
「ヒイロに触んな!」
どうにかして俺を巻きこみたい2人はあきらめずにこちらに向かってきた。
「白鳥、要人先輩、あのちょっといいですか?」
「千尋君?」
「ちぃ?」
「俺、メイの嫁なんでこれからラブラブいちゃいちゃな甘甘な生活送りたいですよ」
せっかく五月蠅い小姑もなにかと邪魔なバカもいない夢にまでみた新婚生活。
「だから・・・邪魔したら2人とも」
「全力でつぶす」
「ので周りの人もよろしく〜」
少し本気を出して威圧気味に言い放つ、真正面からそれを受けた2人は顔色が悪くなって周りの数人は顔を青ざめたようだ。
メイにうざい視線をくれている奴らもこれで少しは黙るといいんだけど。
「ん?つかうの?」
「まさかぁ〜んなのも使わなくてもどうとでもなるんだよ。」
便利は便利だが、それにともなう制約を考えると今は使うべきではない。
もっとふさわしいときに使わなくては、せっかくの有益な手持ちの駒もすべて無駄になってしまう。
「ふーん、邪魔が入らなければなんでもいいや」
「そうそう、ほらいい加減俺が恥ずいからさっさと部屋に行こう」
「うん、あっそうだ部屋別だって」
「そうか、ここじゃメイも普通ランクだものね」
「相部屋がいいって言ってるのにさぁ、用心のためだって意味分かんないよ」
そりゃ帰国子女で、顔もよければそうなるだろうな。
あの、使えなさそうな学園長でも編入生の危機を心配ができるということは、多少の利用価値はまだありそうだ。
「そ、だめだったのか、なら耀岩でも使うか」
「そっかなら安心だね、耀にいなら俺らのこと分かってるし」
「そうそう、無理でもなんでも通してもらうよ」
昔から俺らの味方だから、これくらいのわがままも文句を言いながら、叶えようとしてくれるだろう。
「というわけでよーがん〜」
耀岩にあてがわれている、歴史準備室の扉を開けた。
「いや〜〜〜!!やめろ!」
開ける知らない先生に押し倒されている耀岩。
「うわぁ〜本番中だったね」
「・・・・・・・ほっとく?」
「そうだね」
「ひぃぃぃたすけて〜!!」
「邪魔するなよ」
涙をこぼしながら助けを求める先生。
その上に乗った見しらぬ人。
「どうしようか?」
関わっても面倒、関わらなくても面倒。
「助けたほうがいいと思うよ」
「メイがいうなら助けるか」
というわけで助けることにした俺達。
ロレンのつぶやき
面倒な展開に・・・・・・・・・
ロレンのつぶやき
続くと思う(ボソッ)