第3話 えっ?俺ですか、一般人ですよ。
(?サイド)
窓から暗闇に浮かぶ月を眺めてから目を閉じてやんわりと椅子に身体を預ける。
脳裏にぼんやりとどうしてるかな?なんて思うなんてまるで恋しているみたいで自分自身が気持ち悪い。
「寝てんなよ」
そんな姿に勘違いしたのか頭にコツンと音を立てて起こされる。
もとより寝るつもりなんかなかったが久し振りの集まりに疲労と苛立ちを感じ、せめてもの抵抗にぼんやりと外を眺めることにしたのだ。
途中で飽きてそれすらもしなくなっただけのことなのに。
「なんだよ」
「うわっ機嫌悪っ」
抑えたつもりだけれども付き合いが長いそいつにはバレバレのようで、めずらしーのと笑われた。
人がほっとおいてほしいといって頼んだのに実家の用事で帰省してみれば、どこから嗅ぎつけたのか電話で顔を見せろよと強制的に呼び出されればなんてことはない、行くときにまさかな?と疑ってはいたが、本当にただ一緒にバカ騒ぎをしたかったとは思いもしなかった。
(本当なら今一緒にいるのはあの子なのに)
「なになに、サチ機嫌わるいの〜」
へんなの〜と他のやつらまでこいつに便乗して集まってくる始末
「さっきは楽しそうに率先して突っ込んでったじゃん!」
なにかとこいつらと一緒にいたために腕っぷしも上がり、そこら辺のチンピラもどきにも負けないほどには強くなったがいちゃもんをつけてきた奴らを腹いせがわりにノシテやったのは正当防衛だし、率先もしていない。
「・・・・・・」
バカなこと言ってんなよ、軽く睨んでおいた。
話すと色々面倒なやつらだからだ。
わぁーミキさんが無理してここに連れてきたからサチさん、怒ってますよと後ろで控えていた面々がミキを中心に騒ぎ立てる。
未成年のくせに酒とタバコが好きでだらしない、そんな奴が今いるやつらの頭なのだからびっくりだがそんな風にバカ騒ぎできるのがいいらしく、集まってきたやつらを一応纏めていた。
さっさと帰りたいのに終電はとうに過ぎて、このままだとここで泊ることになりそうだ。
大部分の奴らはもちろんそれが目的でこんな時間まで飲み明かしているのだろうけど
「ミキ」
「あん?」
「乗せろ」
わざわざ俺が地元に帰ってきたのをしっていたし、こんな時間まで俺を引っ張ったんだ足くらいに使ってもいいだろう。
見た目どうり派手ななりでバイクの免許も車の免許も持っているし、確か大型バイクで来ていたはずだから2人乗りくらい軽いだろう。
「キャー!サチってば大胆!!ミキに乗りたいって!!」
えぇーミキさんの上に乗るんだったら、オレの上にも!とかバカなやつらが乗ってくる。
「シロウ・・・・お前はよほど俺に殺されたいらしいな」
一番最初に手を上げて俺俺サギのようにアピールして来たそいつに言い放つ。
オレの殺害宣言を聞いて、わぁーと青くなって蜘蛛の子を散らすように逃げるシロウを追いかけるため置いてあったキャリーバックをミキに投げた。
「おっとあぶねっ」
「大切な荷物だ、終わったら帰る」
そういって俺は騒ぎの中心に走っていった。
ふぅー何あれもうムリだから、きつーーーーい。
教師専用通路を歩きながら思わずため息と愚痴をこぼした。
前回、ひと騒動に巻き込まれたあと何やら視線視線・・・・・・・・・いくら頑丈にできている俺を視線という凶器で殺すんですかというほどの注目度を浴び続けております。
(ついでにいうと伊織の方は えっ脇役受けフラグ!?いや不良攻め、受け!?どちらにしてもビバ!!って阿呆なことを叫んでいる。いやお前も同類だからね。)
いい加減あれから1週間、本当にいくら山奥にある学校だからってみんな暇ですよね。
話題と言えばやれ誰が付き合ってるとか、あの人かっこいいとか正直なんの役にもたたない話題ばかり
それにしてもさぁ俺ってなに?さっきから伊織のことしか話してなくない?
もうここの話は伊織が主人公ですか?とか友達いないの?とか思われてそうー。
うん、いないよ。
そんなにね、一番仲がいいのは今帰省中。
(うわぁーってことはこの学校で素でしゃべてるの1人じゃないもしかして)
・・・・・友達2人だけ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん作ろう。
「あの〜永浦君?」
ひそかな決意を新たに発足した所で後ろから呼ばれた。
「なに?」
(ちーちゃん先生か)
おずおずと声をかけてきたのはうちのクラスの副担任のちーちゃんこと千鶴先生だった。
チワワ達と同じくらいの身長と童顔さで生徒なのかと受け持ち以外の生徒に未だに先生だと思われない。
かくゆう俺もだけれども、けして邪推な目でないのでご安心ください、どちらかというとほのぼのとした目で見ています。
見ていると応援したくなるんだよね、年上なんだけど。
それに以外にも俺にフレンドリーに接してくれる数少ない先生でとても貴重な人。
「ここ先生専用だよ。」
そういうと、よいしょという掛声ともに両手に一杯の教材を抱えてよろよろとふらついた。
(危なっかしいな。)
「・・・・ホストは?」
いつもうざそうな目で見ているちーちゃん先生の相棒であるホストの存在がそういえば見当たらない。
「仲野先生?先生は・・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ。」
そういって含み笑いをしつつ、目は遠いどこかを見ている。
否、睨みつけていた。
(あぁそういうこと)
基本ここの学校は、担任と副担任はペア同士になり動き、そのクラスの指導にあたる。
もちろんそのペアは担当する学科も同じなので一緒に行動するものなのだが。
「男たらしか」
女たらしの逆、男にだらしがないから男たらし。
またかわいい系の生徒に手でも出していて、見かねたちーちゃん先生が埋め合わせをしているということなわけか。
本当、ここだけの習慣というかもうあの先生はどこでも結局はたらしというかそういう運命なんだろうね。
「うん、だめなんだよね。」
もうつかれちゃうよとただでさえ小さい背が丸まり後ろからみたら、疲労感オーラ―がバリバリでながら、それこそ心の底から嘆いていた。
「かして」
両手に抱えているみかん箱ほどの教材を引っ掻くるように持ち上げる。
勢いで持ったはいいが一瞬ふらつきそうになった体を気合で立て直し、歩きだした。
「えぇーいいよ!!僕の仕事だし!」
荷物を取られ、いきなり軽くなった両手を不思議そうにぽけっと見ていた先生はどことも言わず歩きだした俺の手に荷物があるのに気づき慌てて駆け寄ってきた。
そんなちーちゃん先生のいうことを無視して通路を進んでいく。
「次どこでやんの?」
歩きだしたけれどそういえば行先は聞いていなかったなと思い返し聞いてみる。
「うん?2−Aだけど」
「・・・重いでしょ。」
まぁまぁ力のある俺でも重いなと思うのだから、ちーちゃん先生は隠していたが両手に食い込んで痛々しかった。
「悪いよ」
横に並んで持つからといって両手を差し出すが綺麗に無視してさっさと2−Aに向かった。
基本いい子ですからオレ。
「ちづる、なにしてんだおせーよ。」
あのあと何度となく持つからとか悪いから先生だしという一方的な会話を無視して2−Aに着き、先生もあきらめたらしく「ありがとうね」とお礼を言われて中に入るために扉を開けたらそこにはホストもとい仲野先生が腕を組んでこちらを睨んでいた。
お前はどこのホストクラブの人間だと問いただしたくなるような金髪を適度に遊ばせて襟首までのシャギーにしているその姿はとても先生に見えない、しかしよくもまぁこんな姿を学校側も許しているなとじぃぃーと睨むように見つめ返してしまった。
そんな俺の態度が癇に障ったのか器用に眉を顰めた。
「あっ!なに生意気に睨みかえしてんだ。」
「・・・別に」
にらみ返していないんだけど、理不尽にも睨んでたのはそっちじゃんと声にだしていいたかったがそういうとさらに突っかかってきそうなので言わずに視線をそらした。
そんな俺の態度にさらにいらついたのか、さらに俺につっかかろうと踏み出したところに。
「邪魔です!どいてください。」
ちーちゃん先生がオレの前に立って中野先生を睨みつける。
重い教材などは用意もせず、しかも遅いとの顰蹙の言葉にさすがにいらついたところにもってさらに手伝ってくれた俺につっかかってきたのは許せないようで吐き捨てるように仲野ホストに言い放った。
「らしいです」
(おぉー静かな人ほど怒らせるのはまずいってのは本当だな)
つかつかと腕を組んだまま偉そうに教室の前に居座るホストもとい仲野先生を押しのけて教卓に置いた。
あぁ重かった、手をプラプラと振り重かったーのアピール
ホスト先生にね。
つーかまじで仕事しろよ。
オレにどかされたホストはちーちゃん先生にビクつきながら傍でおずおずと様子をうかがっていた。
・・・・・ちーちゃん先生冷たい目してるよ。
普段物静かで、ふわふわしている先生のマジギレしている先生にこれからこんな雰囲気で授業がおこなられるのかと不安そうな顔で2−Aの生徒たちはざわめいていた。
「先生、これ」
ちーちゃん先生の手を引いて手のひらを開かせてその上に常備している腰のホルダーからオレの精神安定剤である色とりどりのお菓子を上から落とした。
「えっあっなん」
小さい先生の掌からこぼれそうになるお菓子達を両手で慌てながらしっかりと抱え込んだけど数個は落ちてしまってここの生徒の足もとに転がってしまった。
拾った方がいいけれど、気づいてくれてるみたいだし捨てるなりちーちゃん先生に渡してくれたりするだろう。
やはり疲れたり、イライラした時は甘いものが一番。
「ありがとね、永浦君」
さっそくお菓子の中に混ぜてあったオレお気に入りの可愛らしい細工飴を手に取って食べた。
色々な味で中にハートや文字が書いてあり、見た目も楽しめる飴は先生も気にいってくれたらしく笑ってお礼を言った。
「いいよ別に」
ばいばいとちーちゃん先生に手を振り、教室を後にする。
お菓子で少しは機嫌が戻ったとは思うけれど、ただホストが余計なことをしないかと心配だけれどもそろそろオレの方も教室に行かないとまずい。
不良を気取ってはいますが、いいこともしないとね。
目指せ!一日一膳、こういうのを伊織いわく「ギャップ萌えだね!!」だそうだ。
オレで大体萌える人いないし、それは目指す気はないけど。
「あのっ!」
今日は呼び止められるなと教室から出て数歩歩いたところに数人の子たちが手のひらをこちらに向けていた。
よく見るとその上には落としたお菓子達が1個、2個乗っていた。
「これっどうしたら?」
隣の子たちとこちらの様子を伺いつつ、わざわざ聞いてくるのでお金持ちの子は以外にも親切なんだと思ってしまった。
「・・・あ、好きにして」
「貰ってもいいの?」
戸惑ったように聞いてくるので、ふと思った。
そういえばここではこういうお菓子は置いてなくて、箱入りだったり、瓶入りだったりしていたからよほど物珍しいのかもしれない。
ここの生徒ってファミリー向けの大袋を食べたことはあるんだろうか?
オレからしたら、これでも高いほうに入るのだけど。
「やった!」とか「楽しみ!!」
とても嬉しそうに笑い合う姿に
「やっぱ、返して」
いった途端に残念そうにこちらに向けて差し出してきた、お菓子達をポケットに突っ込んでかわりに
「落ちたから、こっち」
差し出した手を開かせて、少ないが一握り分のお菓子達をおいた。
親切にもわざわざ聞いてきたし、落ちたお菓子の一つや二つくらいで喜ばれるのも悪い気がしてかといって差し出してきた分だけのお菓子を取り換えてるのも面倒だから多めに渡した。
ロレンのつぶやき
続くと思う(ボソッ)