夏4






夏 4    







“ジャジャジャジャ〜ン”




「アイス三か月分だよ。給料一週間しか働いてないけどアイスなら三か月分!!
アイスの三か月分(多分)でダイヤの指輪なんてのは無理だけど」

「おまえ馬鹿だろ。なんでそんな話につながるんだ?脳みそ少ないだろ。きっと」

「じゃあいらないんだね、アンク。」

「しょうがないから食ってやるよ。」



この言葉でアイスなんてあげてもいいんだけど指輪馬鹿にされたのが腹が立った。
そりゃ両思いでもなんでもありませんよ。


この言葉をあげたら、どんな女の子だって落ちるのに。
アイスは別でね。


「アンク、ありがとうって言って」

「嫌だ」

「この強情者。ありがとうだよ?言えるでしょ?簡単だけどこんなに思いがこもってる言葉ってそうそうないよ?」

「&%$#”!&=*?$」

何語だ?いや何語でもないし、ありがとうなんてこれっぽちも思ってないと思う。

「どうだ?言ったぞ」

「はぁ〜もう食べていいよ。アンク。期待した俺がバカだった。」

「分かればいいんだよ。」
びりぃ〜ぱくぱく。
やっぱり、エロいな。アンクの食べ方。



いいこと思いついた!いたずら!ちょっと遊んでみようかな?!



「ねぇアンク。そのアイスそんなに美味しいの?」

「もう俺のだから一本もやらないぞ。」と、アンクが映司に背を向けた。


「ねぇアンク」

この隙に顔を近づけておく。っと。

「なんだよ、だ・ま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

振り向いた瞬間、映司がアンクの唇にキスをした。


アイスがぽとりとアンクの手から滑り落ちた。

「本当に甘くて美味しいね。」
アンクは湯気が出そうなくらいで頬も襟足も耳も顔全体が真っ赤に染まった。

「え?」

超ー可愛いんですけどこの人・・・。

眼は涙がこぼれそうなほど潤んでいた。もう一度・・・。

これ以上したら、俺が冗談じゃ済まなくなる。




「冗談はよそでやれ。昨日声かけられた女なんてお前に丁度いいだろ。二人で仲良くしてろよ!。」
「なんで冗談でもするんだよ!!しかもお前なんてよりどりみどりだろ。一週間前ご令嬢がお前のこと好きだって。お前だってまんざらじゃなかっただろうが!!」
そういうと俺からくるりと背を向け行ってしまった。


   俺はたった今わかった。アンクじゃなくアンクの周りにいる奴らにムカついてた理由が。
恋愛はいくつもしたけれど惰性だった。

こんな思いは最初で最後かもしれない。アンクが好きだ。

アンクは?さっきので分かった。

だからアンクは最近機嫌が悪かった?
俺たち両思いじゃないか。

ここで追いかけなかったらすべて失う。大切な人も思いも。
いた。アンクは走っていたわけではなかったようだ。良かった。


“ん?あのバカみたいに気が強くって、凶悪なアンクが泣いてる?!”
人が少ないとはいえちらほらいる。そんなこと気にしてる場合じゃない。




冗談だったけど、もう一度キスしたいと思うほど柔らかくて温かな唇だったことも。
アンクじゃなきゃ冗談でもキスするなんて思うはずがない。


他のやつ・・・キショイ。


俺はアンクの所まで走って行き、正面から向き合って
「俺はアンクが好きだ。どうしようもないくらい好きだ」
「正直いうと、今まで出会ってきた女より数百倍アンクの方が可愛いよ?」


アンクは両眼に涙をいっぱいためて、鼻も真っ赤なのに
「俺に惚れない奴なんていないね」だって。
ホント困った子だよ。強がりも泣き顔も全部愛しい。
両思いになってからのキスはしょっぱかったけど、何百年と眠らされていたアンクに
これからいろんなことを教えてあげよう(笑)


余談だが、両思いになった時のキスの時目を開けて、アンクの震える長いまつげや透き通るような白い肌が赤く染まる瞬間を見ていた。






P.S.アンクによって俺は最近世間が明るく見えてきた。
“人生そんな悪いもんじゃないぞ!
運命の人に出会えるんだからな”と言われているような気がしてならないのだ。



あとがき
私まだ5話辺りしか見てません。すいません。
本編は30話近いらしいです・・・