唇   6  







「もう一つ器くれ!!!!」

「え?」

“かしこまりました〜”

(今時の女の子は言葉遣いがなってないわねーー。まあ映ちゃんが追々直していくのも
楽しみの1つってやつですかい?映ちゃん?って器、器!!)




「このキムチチゲ10倍がよほど気に入った映司にはもっと食べてもらわないとな?」
「お腹すいてるって言ってただろ?」

「俺6杯食べちまったから、残りは映司が食えばいいだろ?好きなんだろ?死ぬほど。」

「あ〜〜〜〜好きだよ!!死ぬほどっ!!!!」



あ――――売り言葉に買い言葉だよ〜〜〜。
食べられるわけないじゃん。
こんな激辛!!アンクの舌おかしいよ。甘いもの好きで辛い物も好きって・・・。


不意打ちだよ〜〜〜〜(涙)


もういっそのこと降参すればよかった。
後悔先に立たずだよ。

巧いこと言ったもんだよ。昔の人は・・・。



“器とコーラ5杯になります。ではごゆっくり。”
アンクがよそってくれてる。
やっぱり超→嬉しい?でも、辛さ10倍チゲはいただけない!

ラザニアとかだったら良かったのに・・・。


オレの計画台無しだし!!店のチョイス間違ったわっ!!!

ごめんね。おばちゃん。南無阿弥陀仏。っておばちゃん死んでないから!!

今度は洋食!!
絶対にもう中華と言うか韓国料理店はNothing!!!


この2杯あるうちの1杯をかきこんで、それでコーラに直行――――。
よし!!




ガサガサガサガサッ。


「グフッ。」


ゴックン。


「コーラ!コーラ!アンクコーラ!!隠さないで早く出してっ!!」


「ほらよ。」

映司はジョッキのコーラを一気に2杯飲みほした。


「辛〜〜〜〜〜い。死ぬ。もう死ぬ!!絶対死ぬ!!ねぇ?アンク。俺の口、長さんになってない?」

「なってる。」

「やっぱり!辛くって辛くって、コーラで分散しようと思って頼んだんだけど
オレンジジュースの方が良かったかなぁ〜〜?はぁ〜〜〜辛い。はぁ〜〜〜辛い!!」


        「ヒーーーーーハーーーーーー!!!!」


ヒーハーは古いな。でも、今一番合ってる言葉だろうよ・・・(爆死)


「映司ヒーハーって一体何なんだ?」

この問いに答えててる場合ではない。
辛くて辛くて。

映司は口をあけて手で煽いでいる。しかも辛い辛いと喚いている。
九官鳥か!!と言いたくなる程連呼している。


少しでも言えば軽減されると思ってるらしい。

今はまだお客さんが来ていないからか大の字になって身体を冷やしている。

お客さんが来ていない・・・?ここは知られざる名店だからだ。
路地をくねくねと行かないと着かなくて、しかも看板がないのだ。

映司は町の探索が好きでプラプラと歩いていたらどこかでいい匂いがするということで
やっと発掘できた場所なのだから。



お店の売上げはどうか?と聞きたくなるだろう。

映司も心配になり、聞いたことがあったのだが趣味でやっているから売上げなんて
どうでもいいんだよと言われたらしい。

ちなみにおばちゃんは韓国人で日本に住んで31年がたつらしい。

だからか?

日本語がとても流暢なのだ。




3杯目のコーラーを飲みつつ、

「アンク。ごめん。俺もうムリ。10倍は無理!!後はアンクが全部食べて?
お願いします。すいません。平気ならだけど・・・ハイ。」

「本当に食べちゃっていいのか?」

「だから俺はもう6杯食ったって言っただろう?!こんなの全辛いうちに入らねーよ。」

「どうぞどうぞ。俺もう頭の血管切れそう。」


俺情けな→。甘党のアンクに負けるなんて・・・。

いや、冷たいって分かるってだけだけど。
じゃあ辛いって分かるだろう?!
矛盾してる。



映司はもう早々に白旗を上げた。

最初からギブアップはしていたような気がするが・・・。
映司は辛さを分散させるためにコーラを飲んでいる。
3杯残っているためだいぶ長さんは消えるだろう。


アンクは恐ろしいことに10倍キムチチゲを平然と食べ続けている。


バクバクバクバクッ。


「ふぅ〜〜美味かった。気に入ったよこの店。しかも1万円もらえるからアイス買い占める。」
「ざっとアイスが100円として100個買えるぞ!!映司!!!」

「毎日食い放題だな?」



アンクテンションアゲアゲだよ〜〜。


俺は何かへこむわ〜〜。
食べられなくって食べるのにかなり勇気いって、結局アンクに食べてもらったって・・・。


ホント情けな―――俺って・・・
コーラ飲みつつ、見てたけどおっそろしいよ。この子。