唇  2  







「おばちゃ〜〜ん。お願いしま〜〜す。」

“はいはい。”

トコトコトコ・・・・・。

“おしぼりとお冷になります。それで何になさいますか?”

「どうしたの?おばちゃん?言葉遣いが違い過ぎるけど?」



映司の背中を思いっきり叩いて、小声で“彼女さん。彼女さん!!”
「あ〜〜〜〜〜。そうだね。おばちゃん。でも気にしなくてもいいのに。」

答えとばかりにまた映司の背中を思いっきり叩いた。

“何になさいますか?”
「キムチチゲの辛さ10倍でお願いします。」
“映ちゃんっ!!ムリムリ!!”
「たぶん大丈夫だからさ。無理だったらおばちゃんごめんね?残しちゃうかもしれないけど・・・・」
“そんなの全然平気だよ。”

“(はっ!!)キムチチゲ辛さ10倍ですね。かしこまりました。”



「アンク。10倍って多分すごい辛いよ?唐辛子とかいろんなスパイスがたっぷり入ってって・・・」
「スープなんて真っ赤!!!血の海だよ〜〜〜?怖い怖い。」

「それにしても何で10倍になんてしたの?」

「ちっ!!そこ見てみろよ!」
「え?」


((チゲ辛さ10倍を完食した方には食事代無料にそして1万円を差し上げます。))


「まさかだとは思うけど。これで?」
「そうだ。そうすればアイスがいっぱい買えるだろうが!」


まぁ単純だこと。しかもやっぱりアイスね・・・。好きだね〜〜〜アイス本当。

しかも俺今まで通ってたけど気付かなかったな〜〜?!
それに食べてる人いなかったような気がする。
でも絶対食べられないね。アイスと辛さ10倍のチゲって違い過ぎる!!
真逆じゃん!!

賭けてもいいね。無理だって。俺だって4倍だよ?普通辛いもの好きって言ってもよくて6倍じゃない???



「アンク?チゲ4人前からだし、辛さ10だしアイス好きなアンクには無理だよ?」
「それに俺よく来るけどいつも辛さ4で、超〜〜汗吹き出すもん。」
「うるさい!!食ってみなきゃ分からないだろうがよ!!」


情けないと思われるだろうが、俺はギブアップだろうよ!!
情けないのと地獄を見るのとどっちがいいのよ?!
あ〜〜〜〜〜でもアンクに情けない姿は見せられないかっ!
俺、火野映司。腹に決めた!!
完食するよ。絶対に。
アンクは無理だろうからね。
地獄を見ようと頑張る!!ここで男を見せ付けてやる!!
カッコいいと思ってもらわないと。血の海でも俺は強いんだってところをね。


よし、キムチチゲ辛さ10倍。出でこいや〜〜〜!!!


ってまだ出来るわけないかぁ〜〜〜。



「おい!!映司。考えごとに耽るのもいいが、じゃんけんが後3回残ってるだろうが!」
「7回全部負けてられないんだからな!!フンッ」
「じゃあいくよ?じゃんけんぽん!!」
「はいアンクの負け〜〜。」

「お前、オーズの力使ってんじゃないだろうな?!」

「アンクは初めてだから大体出すだろうなって手が読めるだけだよ?」


「おれはそんなのに負けてるのか・・・・。流れが変われば勝てる気がしてきた。」


「俺がじゃんけんぽんっていうからな?」
「いいですよ〜〜〜??」


「じゃんけんぽん!!!!!」


「う〜〜〜〜〜。何故だ〜〜〜〜〜。また負けた・・・・・。」
「経験の差ってやつですかね〜〜〜?」

「あと1回!!経験の差ってやつを上回ってやろうじゃないか!!!!」