重症   sideA






重症   sideA







俺はコアメダルを手に入れたかった。ただそれだけだった。
グリードに戻れれば、人間ごときどうにでもなれ、それで万事O,Kということだったはずだった。


それなのにあいつが・・・。

正義感たっぷりで簡単に自分の命を人のために使おうとする。
そんな奴に俺は興味を持った。


いや、それは嘘偽りだ。本当は一目ぼれだった。

あの日は春うららかな暖かな一日だった。
太陽があいつを照らしていた。眩しかった。
コアメダルを取り返す・・・


が、そんな事を忘れさせるぐらい太陽が似合っていて大空のようなそんな奴だった。

その笑顔をずっと見ていたい。グリードから守りたい。

コアメダルは本気で欲しいが、あいつに奪わせようなどとは、はなから思っていなかった。


俺は欲が出た。いつまでも傍にいてほしいと思った。


だからオーズにならせた。そうすれば一緒にいられる。

そしてあの笑顔も怒った顔も寂しくなった時の顔や、悲しみにくれる顔。
全部手に入ると思ってた。



なのに、俺の体の元の妹ばかり・・・。


俺には怒った顔しか見せないくせに。

オーズにしたことを後悔している俺がいる。
だって、オーズにしなかったら普通の友人としてだったら、見せてくれただろうに。
映司の大好きな場所の1つ、公園の芝生の上で好きな女の子の話をしたり・・・。


ムリだ。できない。

俺は映司が好きなのだから。

他の人に見せてる何もかも包み込むようなあの優しい笑顔が好きなのだから。




認めたくはない。




800年前だってそんな浮いた話は1つもなかったし、その後は800年間眠らされていたのだから、
本当にこれが恋なのかも本当のところ分からない。


でも、この胸が掻き毟られるようなあいつのことを思うだけでキューとする気持ち。

これはもう恋としか言いようがない。


重症だな俺は・・・。あの妹に焼きもち焼くぐらいなのだから。

あの妹はどうなのだろうか?映司のこと男として見ているのか?
そんなことぐらい分かる。確信できる。


なぜなら映司に同じ熱い視線を送っているのだから。同類だからだ。
店にあの妹に引っ張り出されて食事という事になっているが実は
映司のコスプレ衣装を見たいがためなのだ。


それがすごくかっこいいのだ。

映司をだれにも渡したくない。

オーズとして縛りつけてでも。

だが、映司は俺があの妹の兄でいることであの女にちょくちょく声をかける。

俺には?



共に戦う者同士として話し合いたいと思うが、いつもつっけんどんになって、
映司とケンカ腰になってしまう。

長年生きていたのに、コミュニケーションの取り方も分からないのか?と
自分で自分につっこんでしまう。

戦いのときの視線は合わせられるのに、普通に戻ると頭に血が上ってしまって、
何を話せばいいか全く分からなくなる。

だから、いつも無言だ。


下手に喋ってばれたら辛いのは、俺だ。


どうすれば好きになってもらえるのだろう?



最近知った曲の中で(俺にしては超ー珍しいことだが)
目立つにはどうしたらいいの一番の悩み。
これは大丈夫だと思う。

曲の後の性格よければいい?そんなのウソだと思いませんか?とな。
が、映司の場合外見よりも中身を重視しそうだ。


俺の外見はムカつくが、あの女の兄の顔にちょちょいと手を加えて中性的にしたつもりだ。

でも中身となると、俺に点数ををつけるとしたら100点中ー120点だろうな。

映司にとっては。


考えれば考えるほどどつぼにはまっていく気がする。

映司に好きだと言って断られたら、この関係唯一の口げんかも・・・



それより死にたくなる。

しかも一目ぼれですなんておこがましくてとてもではないが言えやしない。


好きだから映司、おまえをオーズにしたなどと・・・口が裂けても言えない。